要件定義の進め方

システム開発の大炎上を防ぐために、上流工程(前工程)に位置する「要件定義」について、考えていくブログです。

要件定義書の作り方
PDCAサイクルではなく、PDCサイクルを回そう
あるべきV字モデルについて整理した
スコープを決めてから、QCDの議論をしよう

平均的には、プログラマ⇒SE⇒ITコンサル⇒プロマネの順で年収は1.2倍ずつ増える

本ブログでは、要件定義ができるような人材を増やすことを目的として、色々な記事を書いている。要件定義ができるようになると、システムの炎上を防ぐことができるという嬉しさはあるのだが、他の面での嬉しさはないのかということで、賃金という切り口で調べてみることとする。

IT業界における平均年収(dodaの募集案件ベース)

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ITエンジニア職種別年収(出所:doda 20211213)

引用:【165の職種別】平均年収ランキング 最新版 |転職ならdoda(デューダ)

上図に、dodaで掲載されている、ITエンジニアの職種別平均年収を示す。

本ブログで使用している単語と照らし合わせると、筆者の捉え方では、

  • ①:実装者
  • ②:設計者
  • ③:要件定義者
  • ④:プロジェクトマネージャー

という解釈となる。平均月収ベースで考えた場合、実装者が設計をこなせるようになると+5万円、設計者が要件定義をこなせるようになると+10万円、要件定義者がプロマネの業務をこなせるようになると、+8万円といったところであろう。

ただし、このデータはあくまでもdodaに掲載されている募集案件の平均値であることに注意したい。私の感覚からすると、ちゃんとしたプロマネの方が派遣された場合、年収1000万円は超える気はする。ITコンサルという職種もこんなに低くはない。

抽象的な問題解決能力とコミニュケーション能力が年収を左右する

①、②、③、④で年収が異なる理由は、解決対象とする問題の抽象度とコミュニケーションの大変さの度合いではないかと考える。当然ながら、ITコンサルやプロマネが直面する問題のほうが抽象度は高く、解決方法を間違えるとプロジェクトの収益が著しく低下するというケースがありうる。そのため、彼らの責任は重大であり、その責任に見合った収入を提示されるということとなる。また、コミニュケーションに関して考えてみると、それぞれがコミニュケーションをとる相手は下記となる。

  • ①:設計者、コンピュータ
  • ②:要件定義者、実装者
  • ③:顧客、設計者
  • ④:ほぼ全員

①については、基本的には設計者とだけコミュニケーションを取っておけばよいので、比較的ストレスは少ないと考える。②についても、要件定義者とプログラマの板挟みとなるのだが、ある程度要件が固まっているのでやることはシンプルであり、コミュニケーションはそこまで大変ではない。③にもなってくると、顧客と頻繁にすり合わせを行うこととなるので、結構大変だ。④に至っては、ほぼ全員とコミュニケーションを取らないといけない。人同士で認識を合わせるというのは難しい作業であり、面倒な作業だ。その面倒な作業の対価として、①<②<③<④の順での年収となっているように感じる。

平均的には、プログラマ⇒SE⇒ITコンサル⇒プロマネの順で年収は1.2倍ずつ増える

あくまでも平均の世界での話となるが、プログラマ⇒SE⇒ITコンサル⇒プロマネの順で、年収は1.2倍ずつ増えていくようだ。

プログラマの年収を400万円とすると、SEは480万円、ITコンサルは576万円、プロマネは691.2万円となり、dodaに記載されている年収値とそんなにずれてはいない。ステップアップを狙うならば、だいたい年収は1.2倍になると覚えておこう。

要件定義スキルの良い点は、そのスキルが汎用的かつ陳腐化しにくいこと

潰しが利くのはどの職種かというと、筆者は要件定義者であると考える。なぜなら、要件定義をするという行為は、企業の問題を解決する方法を考える行為だからである。IT技術に依存していないところがポイントだ。IT技術というのは、日進月歩の世界であり、数年前の技術が、もう時代遅れとなっていたりするものだ。そうなると、常に技術のトレンドを追いかけていかなければならなくなってしまう。その点、要件を定義する工程というのは、その企業の目指す姿と現状を把握し、問題を解決するためにITに何ができて欲しいかを定義していく工程であるため、IT技術の進歩の影響を受けにくいのである。

若いころはIT技術を積極的に勉強できたとしても、家庭を持ち、子育ても家族サービスもしなければならない状況となってくると、IT技術を勉強する時間をとれなくなってくるものだ。早い段階で要件定義スキルを磨き、IT技術の進化速度と少し距離を置いてみるのも良いかもしれない。

結論:陳腐化しにくいスキルを身に着けよう